精神性豊かな美術として日常空間に於いて楽しみ、安らぎと癒しをもたらす仏教美術の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。 大阪市旭区のあさば佛教美術工房

詳しくはこちら
Links

3月のピックアップ

彫刻材

彫刻材

今月のピックアップは、彫刻材についてです。
「今月のピックアップ」では 仏教の世界に親しみを持っていただける様、各回で一つの作品やテーマを取り上げご紹介します。
対話形式の掲載にしていますので、ぜひ見てください。

今回は向吉悠睦先生の作品で使われている
彫刻材についてのお話をお聞きします。

今回は彫刻材、材木の話をしようと思います。

この仕事自体がもう材木ありきなので、今12tトラックで12〜13台分で300本ぐらいを貯木しています。
170〜180坪ぐらいの倉庫の半分以上が埋まっています。
この業界でこれほど貯木しているのは多分 私ぐらいだと思います。
だから、もうほとんど9割5分※1以上のお客さんの仕事はそれで賄えています。

毎年、大きなのは一本づつ、小さいのは どんどん使った分をそこに補充していって、5〜6年また置いていくといったシステムで、桧、楠、桜、白檀、栃、うちは大方こんな感じの材木を使っています。

原木で買って私らが使うのは、ドーナツの部分で真ん中の5~60年の部分は使わないんです。

ドーナツの部分

250年という年月のもとに大きくなった木を切って使わしてもらいます。
芯持ちといって、柱としてもすごく丈夫でいい材料で、3〜4mぐらいは節がないんです。
だから無節なんてよく言います。

節がないというのは、その木がものすごく若く、小さいころの20~30年ぐらいの時に枝打ちをして、そこから20~30年経った50〜60年後の部分なんですね。
230年前に山師の人たちが枝を打ってちゃんとお世話をしてくれたから、そういう木になっている。

今、一番古いのは父親が持っていたもので、もう40年以上 自然乾燥させているものがあります。
彫刻材は、この乾燥も大切なんです。

父親も14%ぐらいまで木の中の水分含有量を落とすんですよ。
15%を切ると、百貨店で展覧会をしてもまず割れないです。

うちの作品を百貨店とか美術館で展覧会をしても動かないというのは、 やはり長く自然にぎりぎりまで水分の含有量を減らしているからです。

だから、昔に鳥のシリーズを楠で造って京都大丸でやった時は、ほぼ全部割れました。
その時の作品の水分含有量が多かったからなんです。

それを父親に言うたら笑われました。
「そんだけの材木を自分で育てて※2いないからや」って言われてしまいました。

それまで私が自然乾燥させた材木を貯木していなくて、
父親のもので、いいなと思ったのを分けてくれって言ったら、嫌やって言われたでしょ(笑)※3

私が独立してすぐの若い頃に、
「あっ、これはいい機械を見つけた! いい業者を見つけた!」と思ったんですよ。

例えば、直径が1mで長さ5mの材木があるとしたら、
切り倒してすぐの材木の中は3tぐらいが水なんです。

建築なんかでよく使う技術なんですけれども 強制乾燥する機械でコンテナぐらいの大きな機械で強制的に圧をかけて材木の中にある水分を外に出すというもので、それをいっぺん使わせてもらったことがあるんです。
それをすると 一気に2tぐらいの水が抜ける。

乾燥した材木がないと彫れないから、どうにかして乾燥させたかったので、その機械に入れると すぐ使えるようになるだろうと思って。

儀木口(こぐち)のイメージ図

結局、木口(こぐち)が 1mm間隔ぐらいに細かく無数に割れて、使い物にならなくなって、
帰りは泣く泣くトラックに積んで持って帰ってきたんだけど。。

それからしばらくして、
五重塔や三重塔を造る棟梁ところに行って、
ちょっと愚痴まじりで
「強制乾燥の機械はもう二度と使わない」と話したら、
「あほか、そんな機械をお前が使うからじゃ」って
怒られて(笑)

「父親などの彫刻家は、材木を何十年と乾かしている。
 あんたはそれを 1ヶ月や 2ヶ月で
 30歳も40歳も歳をとらせたことになるんや」って
言われて、

「いや、乾燥させるということは
 若返らせることじゃないの?」と聞くと

「違う、乾燥させるということは人間とおんなじで、
 5年乾燥した、10年乾燥した、30年乾燥した。
 それはなぁ、あんたと一緒に歳とることになるんや」
 その歳を急にとらせたら、
 それは材木に病気をおっかぶせたのと一緒や」と
言って教えてくれました。

材木は一緒に自分と齢(よわい)small>を過ごして、
ゆっくり いい材料になる。

私らは"熟成"という言い方もたまにはしますけれども、そういう風にして一本一本 乾かしてあるんです。

"熟成"ってどんな風に見えるものなんですか?

例えば桧なら、木を切ってすぐは水分があって その時に出る香りって割と強いんですけれど、まだいい香りに近いと思います。
でも、水に浸けないでカンナを引くと酸っぱい においがします。

桧特有のやわらかい芳しいあの香りというのは、水に浸けて、それを自然乾燥させて彫刻していく、そういう風な手順を踏んでやってこそなんです。

桧の家屋といっても、
昔の材木を使って再利用をして建てた家と、
新しい建材を使って建てた家の においは全く違います。

建築材というのは、ほとんど水に入ってきていない。

80年、100年経った民家の材木を解体して、再利用してを建て直した家があったとすると中に入ったら、
私らが使っている桧の香りになっています。

これは、いい材料使っていますねって言うけれど、違うんですよ。
建てた当時、水に浸かってなかったかもしれないけれども、昔に建てられてから長くなって独特のにおいが全部消えているんですわ
という風に大工さんに教えてもらいました。

250年以上かかって育ってきた木は250年生きるんですよ。
そこから朽ち始める、250年かけて。
だから500年生きるわけです。
それをうまく使うと 1000年 桧は持つというのは、私は案外嘘じゃないと思います。
昔から建っている心柱になっている木とか、これは1200年前のものやとか言ってやっていますけれども、
あれはすごくいい状態で、日本やから残ったんやろうなとか思いながらも、その木を見ていましたね。

薬師寺もそうで 当時、もう日本には大きい木は御神木とか天然記念物になっていて見つからなくて、
台湾の桧で台檜(タイヒ)、アメリカの桧とか言われている米檜(ベイヒ)を使っていますので、
やっぱりね、まずは においが違う、お堂に入った時の。
独特の油の においに近いものがやっぱりして、ちょっと香りが違うなと感じます。

材木をお世話をしていると
「あっ、この子はちょっと今年は風邪ひいたな」とか
「この子、ちょっと腹痛いたいんかな」みたいな感じ方※4をします。

原木のまんまで置いてある楠なんかは、毎年1センチ、1センチづつしか乾かないので、
やっぱり25年、30年置かないと中まで乾かない。

だから、私が若い頃から貯木していた材木が、今 どんどんどんどん使えるようになって、
父親が残してくれた材木※5をいまだに使いながら仕事をしています。

私が、今 買い付けをした材木が 私の仕事として使えるかどうかは、ぎりぎりぐらいです。
残り20年を仕事したとしても、その間に乾くかなというぐらいの材木なのでね。

だから、後の世代に残す材木ということになりますよね。

10年にならないぐらい前の話ですが、
バイオリン職人の外国の方に 私の材木を いっぺんお見せしましょうとなって、その人が思うより はるかに多い量を私が貯木していたので、
「なぜ こんなにたくさんの材木を残してるのか?」って聞くので、

「いや、私の後の世代がいるでしょう。
 その人たちが一人二人で使い果たすぐらいの
 材木だったら、貯木とは言わん。
 だから、一世代、二世代がどんどんつないで
 いけるようにするのが、
 日本の仏像を造ったり、建築をやったりする人らの
 貯木という材木の置き方で、
 すーーっごく大事にしてますよ」

「一番いい材料はどれ?
 それは君のために置いておくのか?」と聞かれて、

私らは、材木もその時の体調で使える状態の
ベストタイミングで一番腕のいい人が使えばいいと
考えているので、
「いや、その時に縁のあった人が使うよ」答えたら、
なんか 納得いかない顔をしていましたね。

バイオリン職人も30年、40年以上と乾燥させたものを
バイオリンの板として使うわけですよ。
乾燥年数が浅い材木は、若い職人さんが作って腕を上げていくためのものとして使われる。

だから貴重な材料は、技術のトップクラスの人たちが使う材料ということで、
「なぜだ、それは自分が使うものではないのか?
 一番いい材料は 僕が使うんだ!」って
言っていましたね。(笑)

それだけの量の貯木には
他の理由もあるのですか?

例えば、依頼主から「こんなん彫ってほしい」と言われた時には、そのお話を聞きながら、
「あっ、あの材料があったな、これってもういけるかな」
という風にして聞いているんですよ。

その材木の選定が頭の中で始まらないと
全国を走り回って探してこないといけない。
仕事をする上で、ちょっと手持ちがないなぁってなるのが嫌で、この40年 ずぅーーっと貯木してきたんです。

その時に縁のある人の縁のある材木が、私の手元にあるというのが、逆にすごい自信で、後ろから包み込んで、ぐっと守ってくれている感じがしているんです。

材木を大切に残していくことは、とても大変なことです。
ただただ 放っておくだけでは、虫が入ったり、動物が来たり、カビさせたら終わりやしね。

昔は使っている材木に松の木もあったんです。
松の木も国内産ですごくいい材料があったんですけど、
それがもうほとんど手に入らなくなったので、一度 外材の紅松(ベニマツ)を使ったんだけれど、やっぱり虫が湧きやすい。

外国から入ってきた材木というのは そのまま貯木に回ったりするので 水に浸かってないんです。
自分のところで材木屋さんに頼んで、川とか沼とか溜池にドボンと浸けてもらえればいいんですけれども、水に浸かっている間に卵とか虫とかも全部死んじゃうんで。

春先に木の下に細かい木のくずみたいな粉がぽろぽろぽろぽろと落ちるんですよ。
木の中に入っている虫が、卵から孵(かえ)って木を食べて、ちーちゃい3mmぐらいの穴から出てくる。
それを放っておくと他の材料に虫が移っちゃうんです。
だから、もうその材は全部切り捨てます。

そういうのが1、2回あって、もうちょっと御免被りたいと思って外材はやめて、もう松は一切使わなくなっています。
うちはやったことないけど、虫が付いたら倉庫全体に燻蒸(くんじょう)をかけてやらないかんようになります。

火事になっても嫌やしね。
だから倉庫には火気なし、ガスや暖房器具も一切なしっていう風にして、何かあるとすれば、もう電気のショートだけなんで、もう蛍光灯と200vが1個だけ。
ショートしそうなコンセントとかからは全部離してて、奥に積んであるところのコンセントは全部切ってある。
もう電源がそこへ行かないように、ショートしないようなことにして。
で、手前の作業をするとこだけのコンセント4つと200v 1個残してあるだけにしてても、安心できないものです。

これがなくなったら、うちは終わりやな
って思ってしまうんでね。

外材との違いでもう一つは、
外国の桧は横に縮むし、縦も縮むんですよ。
日本の桧は横にだけ。

家の床柱はね、ほぼ外材なんです。
黒檀とか紫檀とかいい材料だけど、それが10年以内に
上か下に隙間ができるんです。
それはやっぱり縦に縮んでいるからで、例えばちょっと柔らかい木で、日本の北山杉を床柱にしている場合は、上下は空いてないんです。
多少縮んでも、他も同じような材木を使うのであれば、家全体が同じ様に縮む。

やっぱり家っていうのは、二代 三代残る 100年もん なんですよ。
一生に一回の大仕事やって思って、やっぱりしっかりと考えてやっています。

だから、せめて自分の仏像の材木だけは、外材は一切使わずにやりたいという思いから始めたので、唯一白檀だけ。

この白檀だけは、どうしようもなくて。

昔はその度にお香屋さんが貯木していた直径20cmや25cmとか大きめのものを分けてもらって やってたんだけど お香屋さんのところに入ってくる分が少なくなったので、
「申し訳ないけど、仏師さんにお分けする分が もうないですわ」というのが、もう40年ぐらいになっています。

そんな風なことがあって、白檀という木は仏師さんは、ほぼ持っていないと思います。

それから、いろいろと縁のあったところから 少しづつ手繰り寄せ集めてやっていたんですけど、たまたま、長崎で白檀の輸入を最初にできるようにした大臣のお孫さんと巡り逢うたんですよ。

明治の当時の大臣がインドに国交を樹立してくれてありがとうということも含めて、私財で1,000本の白檀を買(こ)うてあげたんだそうです。
それを倉庫に置いていたらしいんです。

その方が亡くなって、後継ぎのお孫さんが
「なんじゃ、この汚い材木は‥」って、
ただの薪やと思ったらしいです。

そこに修理に行っていた大工さんが、たまたま私の知り合いだったんですよ。
白檀の匂いがするでしょ、
これ、白檀ちゃうかという話になって

お孫さんにも言わずに
「向吉さん、いっぺん見に来た方がええで!
 とんでもない量があるで!」って
呼ばれたんですわ。
行ったら白檀やった。

お孫さん
「これ、もしよろしかったら、もう持って帰って〜。」

向吉先生
「いやいや、持って帰ってちゅうのは
 ちょっと待ってください。
 これ、白檀っていう木ですよ。
 もしあれやったら、この太いのだけでもいいから
 分けてもらえませんか?」

お孫さん
「あぁ〜、いいよいいよ、
 別に こんなん 持って帰ってもうてください。」

向吉先生
(違う、違う、違う。(汗))
「白檀というのは、1kg、10万円しますよ。」
 って言ったらね、

お孫さん
「何ぃ?」って(笑)

後で問題になって訴えられてもいかんし、正直に相場を言って、倉庫で2mぐらいが満杯になる量の中から崩して、
節も、腐りもいっぱいあって、ネズミがかじっているのもあったけど、鬆(す)は思ったほどなくて、とにかく状態の良い一番太いのだけ30本だけ抜いたんです。

そのおかげで私が一生 仕事をする分ぐらいの材木は持っています。

これはやっぱり縁だったと思います。

最近は、ほんっとうに材木が少なくなっているのがわかりますね。

年6回あった市が、2回か3回しか開かないことや、
若師匠のところにいてた弟子の頃からで37〜8年の付き合いになる京都の材木屋さんがちょっと体調が悪くて行けなくなって、ここへ持って来てくれる機会も ものすごい減っています。

だから、機会があった時に集めておかないと仕事にならないので、電話があった時に
「向吉さん もう これだけしか集められへんかったけど、
 とりあえず行きます」と、
それで持ってきてくれた時に
「全部そこに下ろしててー」
というのが、もうここ10年ぐらいかな。

大体トラック1台分ぐらいの集めてきた材木を
年に2〜3回、全部買います。

最近は選ばないので、トラックの中はもう見ないんです。

私が全部買うもんやから、トラックに積む時に私のためになる材木だけを積んでくれているので、持ってきたら全部置いていってもらいます。

そんなに材木が少なくなっているんですね。
先生が貯木している木で多いのは何になるんですか?

とにかく桧が一番多いです。
けど、もう桧は販売中止になったんです。
その方から今年いっぱいで廃業しますってことで連絡がありました。
「あ、もう桧はこれで終わりやなぁ」って思ったので、この方が持ってる桧は全部買いました。

木曽の桧は、一等材から五等材まであって、伊勢神宮の遷宮がメインなので そのうちの一等、二等は ほぼ全て伊勢神宮の方に回ります。

切った時に、ほんっとうにきれいに木目がど真ん中にあって、奥から手前までのどこにも節がないとか、節があっても1個や2個くらいというのが一等、二等なんですよ。

そういう材は切り出す前には、もう札ががかかっていたりしますからね。
遷宮の この柱になる木、この軒になる木、この柄(つか)になる木と決めて、伐採せずに置いておくらしいんです。
それを20年貯めて、遷宮に使う。

だから一等、二等というのは、民間には降りてこず、私らが目にするのは 三等材以下、ほぼほぼ 四等材です。
で、それが余ったとしたら、そこから民間に降りてくる。
それをみんなが狙うんですよ。

私はもう木曽しか買わないんですけど、自分たちもその桧を競う時もあるし、たまたまそこから外れた山からでも、
遷宮の入札にもかからない、多分これはちょっと悪い木やろうと はねられる木があるんですわ。
その五等にも入らなかった木。
でも切ってみたらきれいな木ってやっぱりあるんですよ。

その方のおかげです。
本当に不自由なく、みんながあっちこち探し回ってやってる時にうちはここに持ってきてくれる。

こんなんありました、あんなんありました って。

それで全部仕事ができました。
本当に助かりましたよ。

チャールズ(Charles Ray)さんに大きな木、直径2mぐらいの長さ13mの作品「桧」を造ったんですけれど、 それはシカゴ美術館に納まっているものです。

その桧は、その方が全部調達してくれて、販売されている量が少なくなった時に大手さんを抑えて その一年に出たのを全部入札して買い集めてきたんです。
だから 市への出入りが、一年間禁止になったんですよ。
それぐらいの量を使ったんです。

市に出ている量より多かったので、自分がそれまで貯めているものも含めて、いきなりトラック3台か3台半分の材木を持ってきましたもんね。

それがなかったら あの作品は出来ていない。

「材木が集まらんのに 造れるわけないやろう」
という話をしていたら、
「集めてきます。わかりました」って言って

(向吉先生が小声で)
「いや、わかりましたって言わん方がええって」
(一同 大笑)

どうすんねん(笑)って思いましたけど、
集めてきました。
あれは、驚きでしたよ。

集めてきたら、こっちは彫らなあかんやん(笑)

そんな経験もしながらですけれど、大量に要るときには大量に集まってきたし、吟味して吟味して1mmの中に2つ3つの木目が入るぐらい細かい木というのも見させてもらった。

そんな木目の桧なんか、お目にかかれないですよ。
それも全部集めてきました。

あの方の眼力とつながりとで集めてもらって、
うちで貯木をして長く置いといて、
自然乾燥でうまーく乾燥できて、割れない様にして、
それで使って、作品になった時には
まぁー、格別ですよ!

やっぱり、そこら辺は作品を造るのも、醍醐味ですけど
材木のことを考えたら※6、これは えらい醍醐味やなってやっぱり思いますよね。

その機会、その時に手を打たないと、
もう二度と巡り合えない材木なので、それは ほぼ外さないようにして手元に引き寄せましたね。

栃の木を使い始めたのはこの5、6年です。
栃の木は、全部取り尽くされてもうなかったんですよ。
たまたま、ダムで栃の木が邪魔になるから切ってくれってことがあって5、6本切って 奈良の業者さんから 向吉さんどうですかって連絡があって、

喉から手が出るぐらい欲しかったのを、
抑えて 抑えて…
「まぁ、暇やから行くわ。」(笑)

そこへ行って見て、
とてつもなく大きくて、直径3m以上ですよ。
一番大きなのを2本分けてもらいました。
その栃の木が4mあって それを全部積んで置いてある状態です。

「向吉さん、これ、どうしますの?」
「彫刻材で 使う。
 あんたらはテーブルを作ったりする
 建材の人ばかりにお声かけてるやろ?
 よう、私に電話してくれたわ。」って言って、

「関東にも栃の木を探している人おるはずやから
 彫刻をやっている人、学校の講師や日展をやっている
 そういう人に いっぺん連絡してみて」

ほんだら、結構欲しい人がいたみたいで、
それからまた栃の木を探しに行き出して…。

そら あるかいっ!(笑)

その栃の木が、今 作品になりつつあって、
乾燥している分だけ使おうとすると、小さい木の外側の大体30cmぐらいが乾いてきているんですよ。

また、栃の木ならではの面白味が あります。

高村光雲という方が 私は大好きなんですけど、
光雲さんの国宝になっている彫刻「老猿」が栃の木なんですよ。

最初に見て、この人 すっごいうまいなーって思った作品で、一木で彫られていて、ものすごい立派な素晴らしい作品で老猿が手に鷲の羽根を握って座ってぐっと上を睨んでいるんです。

父親から この人は仏師やったんやでって聞かされて、仏師がこんな作品を彫れるんや!って。

関東仏師、江戸仏師と呼ばれて、光雲一派、そこからすごいお弟子さん方が出てるんですよ。
その中の作品で私らも色々勉強させてもらって、独立して大阪にきてから40年、東京へ行ったり、岡山に行ったりと そらもう勉強させてもらって、今も勉強している最中です。

さっきのバイオリンの職人じゃないけれど、

この栃の木、絶対この材料は私が使こたる!
弟子のためには、残さへんぞって(笑)
冗談だけど、それぐらいに作品にしたい材です。

さぁ、この木で何が彫れるかなって、
久しぶりに思いましたね!
材との出会いは魅力ありますわぁ!

誰にも触らせない!(笑)

いまある材木が、長くたくさんの方との縁と関わりがあってこそで、縁があった人しか残れない仕事。
100年、200年、それ以上という重みを感じずにはいられませんでした。
そして関わってきた方々の魂のすごさに感動しました。

今回も本当にありがとうございました。

1 中には、貯木したもの以外で彫るということもあります。
  切った木をお寺に里帰りさせたいと言って、
  例えば老僧の場合、
  「では、今から20年乾燥させます。」って言ったら、
  「わしゃ、おらんがな」ってなるんで、
  そういう場合は、乾かしながら彫っていきます。
  割れるところはもう割れてもらって、ここに割れがあったら助かるな
  というところにちょっとノコを入れて、それで1年置いておいたら
  そこがグーッと開いてくるんですよ。
  ここに歪みが来てくれたらいいなというので、乾燥させて、
  後は木取りをして彫りながら、後は鑿で叩いたら乾燥したサラシを巻いて、
  それで1〜2週間 置いといてサラシを解いたら湿気でドボドボになっています。
  サラシを四重、五重に巻いてても それでも取れる水分は知れていますよ、
  乾くのは外側だけなんでね。
  内側はまだ水分が残ったまんまなので、外側が乾燥し過ぎると
  外側がキューっと乾燥で弾けるんですよ。
  そうならない様にある程度の形が決まってきたら、サラシを巻いたまま、
  底の方から今度は内刳(うちぐ)りと言って中をくるんです。
  等身聖観音なんかも中は空洞になっていますよね。

  木は10cm角ぐらいの塊になると割れ始めるので、
  中を空洞にして厚みを10cm以下にするんです。
  動く力が半分以下になるはずで、そしたら割れにくい。
  大方のところを内刳りで取っといて、外側からある程度きちっと決まって
  仕上げ前ぐらいに、もう一回裏から楠とか栃の木とかは
  内刳りをしておいてあげると割れにくい。
  そういうのをしながら完成させます。

  完成させた後、できる限り長く預かります。
  「できれば3年預からしてください」というと、
  「3年かー。85(歳)やなぁ。。」って言われるわけですよ。

  でも、納めるまでに何回か来てもらったり、見せに行ったり。
  もうちょっと待ってもらって、
  その間にお堂の中に湿度計を置いといて年間の湿度、
  朝、昼、晩の湿気、天気の日、雨の降った日とか、
  春、夏、秋、冬で、むっちゃ暑い日、寒い日の湿度を計って見ておいてもらって、
  最高がここ、最低がここ、1日の間でこれだけの差があるとかというのが、
  ある程度わかると もう多分大丈夫やろうと。
  そんな風にして納めることもあります。

2 父親は乾燥させることを「育てる」って言い方だった。

3 内弟子6年目の吉祥天を楠で彫った時のエピソード。
  当時、父親に分けて欲しいとお願いしたところ、
  実は「嫌や」って断られ、図面を見てもらいやっと分けてもらえた楠。

  今となっては、自分で何年も何年も目にかけてきた材木を、
  「これとこれを分けてもらうわ、なんぼ?」って
  言ってくる人もいます。
  そういう人には絶対分けへん!

  父親の気持ちがものすごくわかった。
  ずーっと見守っていますからね。

4 板の形状にして置いたものを1年に2回、3回とひっくり繰り返しながら、
  その時にいついつにここに置いたっていう年を書いてあるそうです。
  それが、「あっ、この子はちょっと今年ちょっと風邪ひいたな」
  みたいな風になるわけです。
  うちも一緒で、同じ言い方でしたね。
  「この子、ちょっと腹痛いたいんかな」とか「風邪ひいたかな」とか
  「ちょっと鼻水出とるなぁ」とか
  乾燥しないといけないところが逆に湿気が戻ってしまっていたりと、
  そういう言い方をしています。

5 5分の1ぐらいはまだある

6 最初に京都の材木屋の方と息が合ったのは、木のお世話での意気投合から。
  「こいつも材木が割れたら おまえが悪いって言うんか?」
  「そんな 割れん木なんかあるかよなぁ」と先生が言ったら、
  「そうやっ!」って
  ちょっと気の短い、ちょっと何か難しい感じの二人が意気投合した瞬間です。
  笑いましたよ。

  割れるのは、それはやっぱり扱いと置く環境とその人のお世話の仕方が
  やっぱりおかしいからですよ。
  工房の客間でこういう風が吹くところに置いていると
  ちゃんと乾燥させてないと絶対割れますよ。
  でも、割れないでしょう。
  割れないような彫りをちゃんとして手当てをしておけば、
  ぎりぎりのところまで耐えてくれるんです。
  それを割れたからとか言うて文句言うのはおかしいんです。

  割れん材料を持ってきてって言うお客さんもいるらしく、
  材木屋さんも
  「割れんような材料をうちは扱ってない!」って(笑)